MOTARD
WORLD!!
■第10回■
marchesini(マルケジーニ)というホイール。
ターマック(舗装)とダートの混在するコースにおいて、モトクロスマシンをベースとしたバイクによって速さを競う競技である”モタードレース“へ私たちマルケジーニは挑戦を行っています。
そして私たちマルケジーニの目指すものは、単に勝つためだけの部品としてではなく、信頼性やモータースポーツを楽しむための要素にまで及ぶ総合的な価値観の追及です。
日本国内におけるモタードレースのトップカテゴリーである全日本モタード選手権(MOTO1オールスターズ)の2007年シーズンは、10月28日(日)に「ツインリンクもてぎ」においては最終戦が行われ、シリーズ全7戦が終了いたしました。
最終戦のもてぎでのレースにおいては、MOTO1/MOTO2クラス共にマルケジーニ装着車両が優勝を飾り、1年間挑戦を行ってきた集大成として理想的な成果が得られたと言えます。
この機会に今年1年間を振り返って、モタードレースにおける"marchesini M10S Motard"の評価と使用状況などについて、性能・耐久性を中心にできる限り素直(?)にお伝えいたします。
特に実際にモタードレースに参加されているライダーの方は是非とも参考としてください。
By Senna11
マルケジーニの新たなフィールドへの挑戦となったスーパーモタード用キャストホイールの開発。
@ きっかけ
マルケジーニがモタードレースに挑戦を行うこととなったきっかけは、現在の製造方法(鍛造製法)があったからに他なりません。
マルケジーニは2000年代初頭にロードレース用ホイールとして「鍛造製法(Forged)」によるマグネシウムホイール(M10R)の開発に成功し、MotoGPやWSB(World
Super Bike)といったロードレースのトップカテゴリーへの供給を開始いたしました。
その後、デザイン・設計を同レベルとし、素材にアルミニウムを採用した鍛造ホイール(ストリートおよびコンペティション)も開発され市場投入されました。
マルケジーニの鍛造製ホイールには「強く丈夫でそして粘り強い」という優れた特性があり、アルミニウム製鍛造ホイールの誕生をきっかけに、モタード用ホイール開発に向けての挑戦が始まったのです。
モータースポーツの本場USA(AMA Supermoto)では、多くのトップチームからの支持を受ける。
A 性能比較
モタードマシン用ホイールとして性能比較の対象となるのは、もちろん「スポークホイール」です。(マルケジーニM10S Motardは一般的には「キャストホイール」と呼ばれるグループに属します。)
走行区分を
[1]ターマック(舗装)
[2]ダート
[3]ジャンプ
という3つのセクションに大別してご説明いたします。
[1] ターマック(舗装区間)
モタードマシンは一般的にオフロード車両をベースとしていますが、装着されるタイヤはオンロード系(主にレース用スリックタイヤ)です。その主たる理由は舗装区間においてはタイヤ性能の違いによって速さ(スピード)には大きな差が生じるためです。つまりロード専用タイヤとオフロード専用タイヤを舗装路面(ドライ)で比較した場合は、ロード専用タイヤが圧倒的に有利であることは間違いのない事実であり、しかもモタードコースの特性(舗装区間が全体の約7〜8割)から考えてもダート区間より舗装区間を重視したタイヤの選択がスタンダードとなります。
では、ホイールの違いは舗装区間においてどんな性能差を生じるのでしょうか?
タイヤ選択において総合的な速さを追求した結果がスリックタイヤの選択であるという事実は舗装区間においては高いレベルでのコーナリングスピードが要求されるということです。ホイールの剛性や軽さはタイヤ性能に大きく影響を与えるため、ターマックでのスピードが上がれば上がるだけキャストホイールの優位性は際立ってきます。(この特性の差は乗れば必ず理解できます。)
結論としてはターマック区間においてはキャストホイールの選択がベスト(速く走るために間違いなくプラス要素)であり、その性能差は意外に大きいものです。
また、フィーリング的な範囲ではありますが、タイヤ温度の上昇が早いことや周回数を重ねることによるハンドリング特性の変化量が少ない(=常に安定してタイヤ性能を引き出すことができる。)といった特徴もあって、レースディスタンスの走行も含めてターマックにおいては総合的にメリットを得ることができます。

ターマックにおいてはライダーのチャレンジングスピリットを駆り立てる抜群の性能を誇る。
[2] ダート(未舗装区間)
スリックタイヤを履くモタードマシンでのダート区間の走行は、「良い意味の妥協」が必要ということになります。つまりオフロード区間だけに限ればオフロード専用タイヤを装着するのが当然有利ですが、舗装区間との兼ね合いで総合的にはスリック系タイヤの選択が最適である以上、ダート区間ではトラクション特性が極端に低いタイヤでいかに速く走るかがポイントとなると言えます。つまりモタードレースの場合は、ダート区間には「コツ」という要素が含まれることも否定できない事実と言えます。
溝のほとんどないスリックタイヤでのダート区間の走行においてホイール剛性はほとんど要求されないと考えることが一般的であり、むしろ剛性の低いスポークホイールの方がダート走行には適している(=トラクション特性が高い)と考えられます。
しかしタイヤの条件が同じでホイールのみが違う場合、トラクションのフィーリングには差があるものの「前に進む」という観点から見ると、キャストホイールのダートにおける機能は決して負けていないのです。
そして不整路面であるが故にホイールの「ダメージ(曲がりなど)」が気になるところですが、今シーズンのMOTO1コースにおいて、ダート区間走行におけるダメージは特に発生しませんでした。
ダートにおけるキャストホイールにはいい意味で予想を裏切るトラクション特性が存在する。
[3] ジャンプ(→ランディング)
モタード+キャストホイールの組み合わせで最も気になる要素は、やはりジャンプセクションにおける「ランディング時のダメージ」であると思います。
正直に言います。
今シーズンのMOTO1クラスにおいてランディングの際に比較的大きなダメージが発生して苦労したレースは1回ありました。その他ではジャンプの内容によって軽度のダメージが発生したレースが1回ありました。(ダメージの基本的な症状はリムの曲がりで、クラックの発生は一度もありません。)
もちろん、多少のダメージ発生は覚悟していましたので、本来のテスト目的の中でも重要な課題のひとつと言えるダメージ特性に関して比較的有効なデータ回収ができたと言え、さらなるダメージ特性・耐久性向上を目指した製品開発を行っています。
1年間テストを行ってきて、この点についてはまだ課題があるというのは事実ですが、ダメージを受けるレベルというのも相当に高いところにあり、#2
佐合選手、#4 増田選手レベルのジャンプで、しかも高さ・飛距離があり、着地が舗装路面という条件が重なった場合においてダメージが発生しやすいというのが今シーズンの使用過程における主たるデータと言えます。
*現実的には第3戦エビスサーキット、第6戦セキヤヒルズにおけるジャンプセクションにおいてダメージが発生。
*エビスにおいてはジャンプ後の着地が完全な舗装路面で、しかも着地姿勢が過酷であったため、ホイールの種類に関係なく多くのダメージが発生。モタードのレースコース設定の今後の課題と考えます。
*セキヤヒルズではフロントホイールが舗装部分に着地するジャンプを行った際に軽度のダメージが発生。(ここまで跳ぶ選手はほんの一部でした。)
*これ以外の選手においてはダメージの発生はほとんどなく、MOTO2チャンピオンを獲得した#5佐々木選手の例では、ホイール2セットでシーズンを通してノーダメージで戦い抜きました。
結論としてジャンプ→ランディングにおけるダメージに対しては、改良の余地を追及してさらなる耐久性の向上を目標としますが、一般的に見て現状仕様のホイールでも対ダメージ特性は非常に高いレベルにあると言え、純粋な運動性能やメンテナンス性を含めた総合評価を行った場合、マルケジーニのキャストホイールは想像以上に優秀なホイールと言えるのです。
ジャンプセクションにおいては多少の課題はあるが、ダメージ特性はかなり高いレベルにある。
高さのないジャンプは飛距離があってもダメージはほとんど発生しない。
今シーズン最も過酷であった「Rd.3エビスサーキット」のジャンプセクション。さらなる開発意欲を燃やすことに・・・。
B メンテナンス
キャストホイールはスポークホイールに対して、メンテナンス面においても多くのメリットがあると言えます。ここでは代表的な特徴をご説明いたします。
[1]チューブレス構造
・タイヤ脱着作業が容易で迅速に作業を行うことができる。
・信頼性が高い。(構造上エア漏れは発生しない。)
・チューブを使用しないのでリム部分はより軽量となる。
・もし外的要因でパンクが発生してもレースを完走できる確率が高いと言える。
[2]メンテナンスフリー
・消耗部品はベアリング、ダンパー等ですが、消耗サイクルは1シーズン以上。
・スポーク張り調整などのメンテナンスが不要なのが大きな違い。(性能は常に安定)
・基本的には何もメンテナンスする必要はありません。(でもいつも綺麗に磨いてやってください。)
[3]スプロケット
・ダンパーシステムを採用しているため、スプロケットの交換作業がことのほか容易。
ダンパー付きホイールは「スプロケットホルダー」がホイールから簡単に取り外すことができ、これが予想外にメンテナンス性に貢献。
[4]ホイール修正
・引っ張り特性が高いためホイールの曲がりが発生した場合には修正が可能。
(注)曲がりの修正を行う場合は次の点を厳守してください。
1.修正作業はコンペティション用(レース専用)ホイールに限定。(一般公道使用不可)
2.作業をおこなう業者の責任において実施してください。(信頼できる業者に依頼、または弊社までお問合せください。)
3.熱を加える修正は行わない。
4.修正を必要とする目安は縦振れ/横振れ共に「1.5mm」以上の曲がりが発生した場合です。
5.縦振れ/横振れ共に「5.0mm」以上の曲がりを使用限度(修正不可)の目安とする。
6.ダメージ状況の判断基準に不安がある場合は必ずご相談ください。(無理な使用は厳禁)
[5]製品精度が高い
・ワンピース構造であるためスポークホイールのような寸法精度の「あいまいさ」がなく、車体に対するリム位置などの取り付け精度は常に一定。(タイヤ位置のオフセット量についても正確な位置に設計できる。)
・回転部品としての安定性能が高く、ハンドリングおよび車体への振動の影響などは非常に少ない。
最終仕上げは切削加工によるもので、その製品精度は高くしかも美しい。
C ダンパーシステム
現在USAのレース(AMA Supermoto)などで使用されているマルケジーニのモタード用ホイールの主流は、いわゆるダンパーシステムを装備しない仕様で、スプロケットはホイールにダイレクトにボルト止めされる構造となっています。(ダイレクトタイプと呼びます。構造としてはオフロード用スポークホイールと同じです。)
そして今シーズン日本のMOTO1では#2佐合選手と#4増田選手がこのダイレクトタイプのホイールを使用して1年間レースを行いました。(この2人がダイレクトタイプを選択した一番の理由はフィーリングにあり、アクセレーションにおけるダイレクト感が気に入ったようです。)
ただし、彼らが選択したからと言って、私たちはこのダイレクトタイプのホイールが必ずしもベストな選択であると考えているわけではありません。
単気筒とは言え、4サイクル450ccレーシングエンジンを搭載するマシン(MOTO1)で、しかもレーシングスリックタイヤで走行することを考えた場合、ロードレース寄りの機構を必要とすることは明らかであり、ミッションやチェーンなど駆動装置に対する耐久性や信頼性の向上、およびトラクション特性の確保においてダンパーシステムは有効かつ必要な機構なのです。
したがってモタード用ホイールとしてデリバリーを行う主力製品はダンパーシステムを装備したホイールです。
☆☆☆「どうしても」ダイレクトタイプのホイールを使いたい場合には対応可能です。その際はご相談ください。
キャストホイールの特性(高剛性)に配慮し、リアホイールにはダンパー機構が装備される。
D コスト(製品価格)
製品価格もとても気になる要素であることは間違いない事実であることは十分に理解しています。
このことを踏まえた上でマルケジーニのキャストホイールの価格についてご説明いたします。
まずはキャストホイールの場合、当然のことですがスポークホイールと違いホイールの構造はアッセンブリー(一体)構造であり、スポークホイールのようにリム/スポーク/ハブに分割して販売することはできません。つまり提示できる価格はアッセンブリー価格だけであり、余計に割高感があるのではないかと想像してしまいます。
実際の市場価格の比較では同等と言えるレベルのスポークホイール(アッセンブリー)価格に対してマルケジーニの価格は約2〜3割程度高いと言え、これが単純な市場価格の比較となります。
しかし、現実的な使用過程における耐久性やリペアー性、そして本質的な性能・信頼性(=高度な鍛造製法を駆使することによってのみ得られる品質)を総合的に考えると最終的なランニングコストにおいてはマルケジーニのモタード用キャストホイールには意外と言える一面(メリット)があるのです。
確かにモータースポーツ用として“速く走るためのホイール”の開発を第一目標とするマルケジーニの姿勢においては、性能と信頼性(耐久性)を兼ね備えることが最優先項目であり、その結果として製品のコストが決定するという順序と言えます。
したがって製品の開発ターゲットとしてコストは最優先項目ではないのですが、コストについて軽視しているわけではなく「性能・信頼性はより高くコストは納得のいくレベルに抑える」という表現がマルケジーニの提案するモータースポーツ用ホイールのイメージと言えます。
このような観点でマルケジーニホイールを評価した場合、勝つためのレース、そして充実したレースをおこなうための性能・信頼性と価格とのバランスには確かな価値があると言えるのです。
E 走ることの楽しさと充実感
モータースポーツとは一般的に「レース」のことを指すのでしょうが、モーターサイクルにおいては乗ること自体が高いスポーツ性を有していると言えます。
私たちはレースという世界において究極の性能を目指した製品づくりに常に取り組んでいますが、モノを使いこなすのが人である以上、“性能”を構成する要素は単なるスペックだけではなく、使う人が感じる信頼感やデザインに対する印象など様々な要素が混在すると言えます。
だからこそ使う人が強い信頼を寄せることができること、そして走っていて“楽しい!!”と感じることのできる部品をつくり上げることにかなりこだわっています。
このような製品開発の姿勢を貫くことは、実は想像以上のエネルギーとコストを必要としますが、絶対に外すことのできない要素なのです。
そしてトップカテゴリーのレースにおけるマルケジーニの“ものづくり”の最終的な目標は、その基本姿勢(同じ性能と同じ信頼性をすべてのライダーに平等に提供する)が示すとおり、世界中のモーターサイクルファンを感動させることのできる“ものづくり”なのです。
したがってスーパーモタードの世界への挑戦も、勝利するための性能の提供が一番の目標ではあるのですが、走ることの充実感や感動の提供も同じくらいに大切に考えています。
マルケジーニには勝利するための性能に加え、走る楽しさという感動性能がある。
■お問合せください。
マルケジーニのモタード用キャストホイール(M10S Motard)に関するご質問などありましたら、どのようなことでもけっこうですので遠慮なくお問合せください。
担当:石原康文
メールアドレス:ishihara@marchesini.jp |